死の防波堤

そこは、鹿島にある鹿島港南堤防(通称南堤)と言われている立ち入り禁止の防波堤だ。
いわば海釣りのメッカである。 いやメッカであったと言った方がいい。
それは立ち入り禁止であるからだ。

そしてそこは、ただの防波堤ではない。
なんと防波堤が沖合いに4キロもあるのだ。
http://www18.ocn.ne.jp/~turiesa1/tizu1029.htm
http://homepage2.nifty.com/shirahama_morio/kashimaport.jpg

沖合いに4キロと言うと実際はかなりの距離で、実に壮大なスケールだ。

そして、たもとに東京電力の施設があり
温水が排出されていて、魚がウヨウヨ集まって来る。
鯛 鯵 鯖 カレイ キス メバル ヒラメ イシモチと
ここで釣れる魚は枚挙に暇がないほどで、
大物がガンガン釣れることで有名なのだ。
そして、防波堤脇では伊勢海老の大物が沢山取れることでも有名だ。

立ち入り禁止なので、入り口には門があり錠がかけられているのだが、
釣り人たちにとってはこれ以上の釣り場はないというほどの
魅力的な釣り場。
それでもお構いなしに脇から侵入したり、合鍵を作って門を勝手に開けたり
夜中に侵入するなどして、
ここに集まってきて釣りをするのだそうだ。
そこで抜き打ちに警察が一斉取締りをして、不法侵入者は逮捕をされることもある。
去年の一斉取締りでは、16名もの釣り人が一斉検挙されたらしい。
それでも、ここの魅力に取りつかれた釣り人たちが集まってくるのだ。

防波堤は先端まで距離が4キロもあるので、乗ってきた車から乗り換え、
自転車でそこまで向かう者
原付バイクで向かう者もいるらしく
その話を聞いただけでも壮大なスケールである。
俺は海釣りはしないのだが、
最初にそんなスケールの防波堤があると聞いた時に
その果てしなく続く防波堤を歩いたりチャリで走ってみたいものだなあ
と思いを馳せた。
そこから見える海はさぞかし雄大で青々として、美しい光景なのではないかと。

ここには、もう1つ大きな問題があった。
防波堤は普段は波も少なく穏やかなのだが、
ひとたび海が荒れると豹変して波が防波堤を覆いつくし、
以下の写真のようになるらしいのだ。

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/doboku/01class/class29/img/PIC00008.JPG
http://dqnminus.seesaa.net/article/135648958.html

それで今までになんとわかっているだけでも、65人もの釣り人がここで波にさらわれて
亡くなっているのだそうだ。
わかっていない人も入れたら、実際は100名を超えるのではないかとも言われている。
去年の12月にもここで3名の釣り人が高波にさらわれ亡くなる事故が起こっている。
http://blog.hitachi-net.jp/archives/50959212.html

ここの入り口の門には、

立ち入り禁止

この防波堤は高波などで非常に危険です。
既に65人の死亡者を出す事故が発生しています。
関係者以外の侵入、釣り等は法により罰せられます。

と、ただの防波堤ではないことの警鐘を鳴らす
立ち入り禁止の看板が掲げられていることでも有名だ。
その65人の部分が赤い文字で書いてあり、
死亡者が出るたびに書き加えられていく
恐ろしい看板なのだ。

俺たちは、そんな堤防が実際はどんな場所なのだろうかと、
好奇心から見てみたいと思ったのだった。
要するに
いい歳をこいて、俺たちは好奇心旺盛な野次馬なのだ。

銚子から大きな利根川の河口にかかる銚子大橋を渡って国道124号を鹿島方面に車を走らせる。
このあたりは、昔から水郷と呼ばれ河川や湖沼が多く低湿地地帯で、
非常に水が豊かな土地のせいか水田が多い。
夕方なので、銚子の方に向かう対向車線が混み始めている。
30分ほど走って鹿島の市街地に近づいてくると、右の海岸部に工業地帯の赤と白の煙突が
いくつも見えてくる。
カーナビを見るとそろそろ近づいているようだ。

そこから海の方向へと右折をする。
風景は港湾の工業地帯の風景に変わり
道はだだっ広くて、いくつもの鹿島臨海の工場の広い敷地を左右に見ながら
海に向かって走らせる。
そこを左折すると右手は海の堤防になり、
風力発電所らしき巨大なプロペラがいくつも見えてくる。
寂しい海岸の工業地帯に巨大なプロペラが一定の速度で回り続け、
俺にはその風景が不気味に思えた。

前の仕事先に風力発電の施設を見るのが好きで、
何回か車で遠くまで見に出かけたという23歳くらいの
女の子が2人いた。
その話題に怪訝な顔をする俺に、風力発電所フェチなんですよ。と得意そうに答えたあの子たち。

あの連中はこんなものを見て
いったい何が楽しいのだろうか。といまあらためて思った。

そこから、車を海岸沿いに走らせると突き当たりなり左に
写真で見たような門のようなものがあった。
左には確かに電力会社の施設のようなものがある。
確かにここのようだ。

車から降りて見ると
ちょうど門が開いていて、工事関係者が出入りをしていて、
入り口には侵入を阻むように工事関係者が見張っていた。
何かの工事をしているようだ。
こんな寂しく誰も来ないような場所に来た
他県ナンバーの俺たちを、出入りする工事関係者が
怪訝そうな顔で見ていく。
中を覗くと先に延々と続く通路が見える。

http://202.93.87.188/ya/securedownload?fid=Inbox&mid=1_202927_ABRWXcoAAMbRTBMO2w2E2htJ7G4&pid=1&YY=1276317416025&file_name=100603_181232.jpg&newid=1&clean=0&inline=1&cred=fgjGIHg4M_Gt6MCsIu.zSLZ.M9GFU7nRsVRMhEXF20cyTnvKj6.xdq6O5s1OApSvxWSsodOfnHd7mhXWTgYjaGZArOc19fAYy2bqqVO7Qfs-&ts=1276317425&partner=ymail&sig=josce_VhcZ8i.IPVirYJi

そして例の看板を探すと
http://202.93.87.188/ya/securedownload?fid=Inbox&mid=1_202560_ABRWXcoAAL%2ByTBMOpgU5Gm%2F9wr8&pid=1&YY=1276317545400&file_name=100603_181536.jpg&newid=1&clean=0&inline=1&cred=rie2tWm_MvENz__4HFV3WoMJ._H6Zoy2paEFs3D8vQ_27HDAR_Cm.NlHnGZ88Kca31DzC04LNCZbFU.Se.d7FymmQDNVvITH_U5ASYt0jaI-&ts=1276317558&partner=ymail&sig=kY8RNWyA3v7RIuqCoXl2kw--

あった。
去年、亡くなった3名が加えられ
68人に更新されているではないか((;゚Д゚)

見ていたら足がすくむような思いがした。

友達と堤防を隙間から見える位置に移動すると
その物凄く長い古びたコンクリートの堤防が見える。
この堤防が高波で覆われてしまうなんて
想像がつかないくらいに海は今日は穏やかだ。

これだよ これ!心が躍る。

その距離はいままで見たこともない規模で圧巻だった。

友達と俺からは、無意識にすげええええと声が出た。

友達はサーファーでもあるので、そこまでの実際の
海に入った距離感がなんとなくわかるようで、
あそこまでは沖からかなりの距離だね。
世界クラスのサーファーじゃないと、
あそこまでの距離での波乗りは無理だね。
と言った。

そんな距離まで堤防で行けてしまうのだから、
実際に見てもこの堤防は、確かにたいした規模のものだったのだ。

門の脇はちょっとした塀があるのだが、
それを乗り越えようと思えば乗り越えられるような高さだ。
サイドから回り込めば、この堤防は簡単に侵入可能だ。
とりわけ、俺たちくらいの身長があればそれを乗り越えることは
いとも容易い。
いたちごっこで、これからも犠牲者は増え続けることであろう。

俺たちは、妙な見てきたぞ。という満足感を感じながらそこを後にしたのだった。
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by masa3406 | 2010-06-12 12:37


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