人気ブログランキング | 話題のタグを見る

排他性

ジムの高校生と、とあるキックのジムに見学に行った。
動機はすぐに移籍を考えているというわけではないけど、
いずれは考えているのでその候補として見に来たのと、
ちょっと外のジムの雰囲気や教え方を垣間見てみたかったのだ。
俺たちは、ずっと1つのジムにいるぬるま湯に漬かった井の中の蛙だけに、
刺激も欲しかったのだ。

アポなしで行ったのだけど、ジムに入るとまず受付らしい女性が対応をしてくれた。
見学に来た旨を告げると、どうぞ見ていってくださいとのことだった。
そこから、その女性はコースのタイムスケジュールと
カリキュラムを簡単に説明してくれた。
そこまでの流れは、どこもジムでも見学者に対してありきたりな流れだった。

ところが、彼女のどこかで経験はありますか?
の質問から急にそれまでの展開とは変わったものになっていく。
ええ、まあ。と答えた俺に対して
どこのジムかを何度も聞いてくるのだ。
にごす俺に食い下がって聞いてくる。

そこいらへんは、空気を読んで聞かないのが普通だ。

それから、連れの高校生とプロコースについて質問をすると
今までのアマチュアの試合経験について根ほり葉ほり聞いてくる。
その連れがある大会で優勝したことを話すと、
それはいつの大会なのかとマニアックなまで執拗に質問してくるのだ。
しかも、質問している時も終始笑顔がない。

会長の許可がないとプロにはなれないし、それは敷居が高いような事を
挑戦的に上から目線で言ってくるのも
俺たちは、どうも気に食わなかった。
その目の前の高校生はチャンピオンやランカーも完封するだけの
実力が相当に高い高校生のわけだが・・・。

俺たちは、入るとも入らないとも言ってもいないし
ただの見学者であり、お客さん候補のはずなんだが、
この女性はいったいなんなんだろう?
仮に俺たちがフィットネス目的で入会に来た初心者のお客さんでも
こんな対応なんだろうか?

最初から椅子を出されるわけでもなく、どこで見ていてくださいとも言うわけでもなく、
自分のジムや他の今まで見学したジムの入会希望者の対応とは
随分と違ったものだった。
うちのジムなら、アポなしで来ようがそんな対応はしない。

俺たちは、思わず顔を見合わせた。

その時間は初心者コースで、俺たちは熱心に指導方法を見ていた。
そのジムは、会長がミット中心に熱のある指導をしていて、
基本的にタイのジムのようなミットが中心のジムのようだった。
初心者でもルーティーンな約束事のミットではない

タイでは、ミット持ちがただ受けるだけではなく
ランダムに攻撃を返してランダムなに攻撃の指示をして、
ミットがちょっとした実戦を兼ねている。

つまりミットでも攻撃の間合いや実戦感覚を養えるようにできているのだ。
俺たちは、その熱のあるミットに魅了されていた。

時間が来て、初心者コースが終了すると
会長さんが俺たちのそばに来て、どこかでやっていたの?と聞いてきた。

ええ と答えると、またどこのジムかと聞かれる。
今回は、会長なので仕方ないので答えると
なんとも微妙な顔をされる。

いくつか質問をされて答えるもこの間も終始笑顔がなかった。
そのジムの選手が出る団体とうちのジムの団体は、まったく被ることもなく
選手が対戦することもないのだが。

なんなんだろう・・・。先ほどの女性といい
このよそ者を拒むような居心地の悪い対応は・・・。
疑問がさらに膨らんでいく。

それからコースが変わり、俺たちはしばらく見ていたのだが、
プロの選手たちのシャドーが始まった。

それから、サンドバッグを殴る選手

マススパーをリングで行う選手と見ていたのだが、
俺たちはその光景からある違和感に気がついた。

通常、シャドーもシュシュシュと息吐く音を大きく立てる選手
サンドッグを打ち込む時に大きく声を出すタイプの選手
マススパーを始める時に、お互いにお願いします!と大きな声で挨拶をする選手と
どこのジムでも当たり前に見られる練習風景だと思うのだが、
ここでは奇妙なことに、みんな静かなのだ。

サンドバックやミット打ちではうるさいほど声を出す選手がいるものだが、
ここでは誰一人としてそのような声を上げる選手はいない。

なにか淡々とやっているようにすら見えて、熱気が伝わってこないのだ。

そういった声とか、サンドバッグを打つときの声が
周りの空気をピリリと引き締めて、さらに自分も練習に熱が入るという
相乗効果をもたらすものだが、なんかここでは
各々が淡々とやっているようにすら見えてしまう。
ヒートアップしてこない。

俺なんかも、かなり入り込んで気持ちを入れて練習をするタイプなので、
他人が見ていてもそれなりの気迫は感じると思う。
なにか熱さを感じないのだ。
声を出してはいけない決まりでもあるのだろうか?

ミットはさすがには迫力があるのだが、
その始めるまえの静かさが不思議だ。

それから、いよいよ全体練習が始まるかという時に
会長にそろそろ帰ってもらえませんか?と思いがけずに言われてしまう。

こんなジムも珍しい。
やはり、ただの見学者の俺たちは、かなりの警戒心を持たれていたようだ。

俺たちは、とにかく帰り道の後味が悪かった。
高校生が、あのジムの雰囲気だけは苦手です。
絶対に入りたくありませんね。
大人の人に、あんな対応をされたのは初めてです。
と吐き捨てるように言った。

思えば、そこのジムはボクシングをしている人が入会しようとしたら
掛けもちは禁止だから、ボクシングはやめてから来るように言われたそうだ。
今は、キックの選手は、パンチの技術を上げるためにボクシングジムとの掛けもちをする
選手も少なくないのにだ。
うちですら、そこは自由だ。

その日は、格闘技の世界の持つ閉鎖性にあらためて触れた気がした。

同時になにか寂しい気分にもなった。
俺は、次にどこかに見学に行く時は
もうまったくの素人で全然関係のない卓球でもやってた
フィットネスで見学に来たことにでもしようぜと言った。
もう、こんな排他的に扱われたりするのはまっぴらっご免だ。
by masa3406 | 2012-05-13 23:33


<< 限界 浮気 >>