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人間

仲間がデビュー戦をした。
試合前や前日までは、あれほどこうやって戦おう。と2人で作戦を話し合ってきて
本人もそうすると納得していたのだが、(みんな同じアドバイスをしていた)
いざ試合が始まると彼は緊張してしまったのだろう。

それらが、すべて真っ白になったのかのように真逆の動きになってしまった。

普段のシャドーやマススパーやスパーの動きとも全然違って、
本能むき出しのままに戦っているように見える。
自分が出したい攻撃を本能のまま出していて、組み立てもへったくれもないし、
普段の練習やマススパーでもしないような
見たこともない攻撃をしている。

良い意味での誤算と言えるいい動きもあったけど、
勝つためにしなきゃいけない大筋のプランニングが台無しだ。

ゲームに例えるなら、トランス状態かバーサーカー状態のようだ。
こうなるとセコンドの声も届かない。
他に形容するなら、スピーチで大勢の人を前にして緊張してあがって頭が真っ白になり、
今まで用意した文面すべてが吹っ飛んでしまって、
自分でもわけがわからずに話している状態のようなものだ。

距離が普段の自分本来の距離ではなく、わざわざ相手の土俵に付き合ってしまっている。

緊張してあがってるなあ・・・。
これはまずい。と思っていたら、負けてしまった。

晴れ舞台に彼の両親が来ていたわけだが、とりわけお父さんの落ち込みようが凄くて
うなだれていてとても気の毒に見えた。

普段の彼の動きができていれば、普通に勝てていた相手だった。
いや、彼のポテンシャルを以てすれば、普段の70%でも出せれば勝てていたと思う。

ありがとうございましたと俺に律儀に挨拶をするご両親に、
「今日は初めてで緊張していたし、普段の○○は全然こんなもんじゃないですから。
この次は絶対に勝ちますよ。」
と悔しいやら残念やらで、興奮した俺は声高に言ってしまった。

それくらい悔しかったのだと思う。

普段、彼とよく一緒に練習をしている仲間もこれは全然普段の動きじゃない。
こんなものじゃないのにと茫然としていた。
彼も、こんなものじゃないのにと悔しかったはずだ。

つくづく試合は、練習とは別物なんだなとあらためて思わされたのと
練習でいくら反復をしても端正しようが、人間とは面白いもので、
良くも悪くも長年染み付いた動きが出てしまうものだなと思った。

日常生活でも、心がけていたり散々他人から注意をされていても、
人は同じことを何回もミスしてしまったりすることがあるが、
それが人間というものなのだろう。

よく本番になると基本を忘れたかのように大ぶりのパンチになっている選手がいるけど、
そんな選手でも普段の練習では違うのだ。
わかっちゃいるけど緊張するとそれが出せない。

仲間で右フックの練習をしょっちゅうしている仲間がいるけど、
その彼の試合に行ったら、右フックを1発も打たなかった。
なんて不思議なこともあるくらいだ。

緊張してしまうと、得意なことを本番で出すことですら難しいのだろう。

人間がやるもので、機械がやるものじゃないからそうなるわけで、
そこが面白く魅力があるのだ。

とか余裕なレスをしながらも、本当は悔しくて帰りにやけ酒を飲んでしまった。

試合になると緊張してしまい、いくらキャリアを積んでも
固くなってしまって出せないタイプの選手もいるけど
これらは、場馴れしさえすればある程度は解決されていくと思う。

これからに期待したいと思う。
by masa3406 | 2012-09-20 16:35


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