ナンパの心得

高校時代の同級生に誘われて4人で、東京湾納涼船なるものに行ってきた。

この夏の2ヶ月限定で運航する大型客船は、竹芝客船ターミナルを出港して
レインボーブリッジ、お台場、 大井コンテナ埠頭、羽田空港、東京ゲートブリッチの夜景を見ながら
戻ってくる航路で、
2500円で、船内ではビールやサワー  ワインソフトドリンク等が飲み放題だ。
月~木曜日までは、浴衣を着ていくとさらにそこから1000円の割引を受けられる特典もあり、とてもリーズナブルだ。

この船には別の顔があって、別名ナンパ船と呼ばれているほど出会いの船でもあるらしく、
幹事の友達はこれまでに何度も行ってナンパをしたらしい。

平日の6時すぎに浜松町の駅に着くと、その船の乗船客なのだろう浴衣姿の女性の姿をちらほら見かけた。
色とりどりの浴衣はとても艶やかで、思わず目を奪われる。

駅を出て竹芝の船の乗り場に歩いていくと、乗り場の前は大きな広場になっていて、
浴衣姿の女性や男性やスーツ姿の男たちで船に乗る長い行列がとぐろを巻いている。
女性だけのグループも多い。
ギャルや女子大生くらいのグループも多く、全体的に女性の年齢層は低めだろうか。

幹事の友達に電話をすると、3人とも既に着いて並んでいて合流してしばらくそこに並んだ。
6時45分くらいになると、乗船が始まり列が動き出した。

階段を登りチケットを渡して船に乗ると入口にたこ焼きやいか焼きなどの店が出ていて、
生ビールを振舞うコーナーもあるのだが、幹事の友達はそこには目もくれずに
甲板に登った。

俺たちもついていくと、友人はすかさず海に面した端の場所をキープした。

甲板部分はそれほど大きなスペースとは言えず
しばらくすると登ってきた人たちで、甲板スペースはたちまちいっぱいになった。
人との距離がなくてそこそこ混んでいる電車内のように思えなくもない。

いろんなグループが甲板の上に入り乱れて、人がすぐ真横にいるような間隔でごちゃごちゃして
ワイワイガヤガヤしている。
静かに夜景を見るような船ではなく、お祭りの会場内のような雑然とした雰囲気だ。

ネットでこの船について調べてみた時に、カップルで行くにはどちらかといえば不向きだと書いてあった意味が、その場でようやく理解できた。
とてもではないが、2人きりになれて静かなスペースなどないし、
酒が入っていて人と人との距離があまりにも近いがゆえに
カップルでもナンパをされることもある、掟破りの船なんだそうだ。

景色が見える端の部分は限られていて、すぐに埋まってしまうので、
まずこの夜景が見える、限られたベストポジションをキープすることが大事なのだと幹事が教えてくれた。
この船に何度も乗っている彼が言うには最初に、場所取りに走らずに飲み物や食べ物の確保に走るのは素人なのだそうだ。

甲板の上にも生ビールのコーナーがあって、そこで生ビールをもらって皆で乾杯をした。
船が動き出すとまずレインボーブリッジの下を通った。
橋の上の高速道路は何度も通ったことがあるけど、下から見る景色は見たことのない景色でいいものだった。

台場のパレットタウンにある観覧車が見えてきた。
昔付き合っていた子と乗ったことがある観覧車だった。

こうしてほろ酔い気分で夜風にあたりながら船からきれいな夜景を見て、
友達と過ごすのも非日常的でそれはまた格別な気分だ。
酒が飲み放題というのもまた良い。

俺たちの真横付近に女性だけの浴衣のグループが2組いて、幹事の友達が
もう1人の友達Bに手前のグループはどう?と小声で振ると
うーん。イマイチ。などと気のない返事で答えていて、おまえ そんな贅沢言ってたらダメだぜ
こういうのは選り好みをせずに数を打たないと駄目なんだよ。
こいつそりゃねーよと呆れて、俺に同意を求めてきた。

俺も基本的にナンパはできない人間なので、人のことは言えない。
Bは、普段もおとなしい奴なんだけどこの日はさらに無口でビールを静かに飲みながら、まったりと流れていく夜景を見ているのを
幹事がおまえ楽しんでるか?などとしきりに心配している。

酒ばかりでは腹が減ってきたので、俺ともうひとりのCで、食べ物をあらかじめ購入してあるフードチケットを持って買いに行くことにした。
階下に降りて船内をひとまず探検してから、フードを買い求めに行くと
たこ焼き ハムステーキ 寿司 ポテト 焼きそば いか焼き ケバブなど様々な露天が出ていて、
限られた2千円分のチケットをどれに換えるか迷う。

俺はとりあえずたこ焼きを購入して、再び甲板のキープしてある場所に戻ろとすると
さらに甲板が混んでいて人をかき分けてようやく友人の元にたどり着いた。

甲板は、酒が入った人たちばかりでワイワイガヤガヤ、例えるなら船上ビアガーデンだ。
さっきまでいた浴衣の女性のグループに男が声をかけて盛り上がっている。
ちょうど羽田空港付近なのか、飛行機が離発着するのが真横に見える。
甲板を見回してみると、即席の男女のグループがいくつかできていることに気づく。
俺はそこで気づいた。 ナンパ目的なら完全に出遅れている状態なのだと。

多分、この船は最初の2・30分くらいが勝負なのだろう。
あらかじめ声をかけたい女性のグループにあたりをつけておいて、声をかけてダメなら次と移行していかないと、
同じような目的の男達に取られて少なくともその時間の盛り上がるグループができてしまうのだ。

ナンパが得意な幹事の奴が、まだ船も動きやらない停泊中からしきりにキョロキョロしていた理由や、
友人Bにあのグループはどう?あっちのグループはと聞いていた理由が理解できた。
俺たちのまわりには、会社の同僚だろうか男ばかりのグループや男女のグループ 
カップルと出会い目的なら、対象外の人たちしかいなくなっていた。

夜景を眺めながら友達と話をしていたのだが、
俺は腹が減ったので、フードでも買おうかと再び階下の船内に降りることにした。
先ほどの階下に降りていくと、そこにはステージがあり
ガンガンダンスミュージックが流れて浴衣を着たダンサーたちが踊っている。

そこはさながらダンスフロアのようになっていて、客が一緒に踊って誰もがハイテンションで盛り上がって踊り狂っているではないか。
酔っぱらいでハイになった俺は、これは参加するしかない!と
そのまま吸い込まれるように、その中に参加して踊りまくってしまったのだった。

もうクラブに全然行ってないし、イベントともご無沙汰だ。
踊るのはなにかが解放されたようで最高に気持ちが良い。

ああ 俺って人間は本質的に体を動かすことが好きなんだなと再確認をした。

最後の曲が終わって、周囲の人にハイタッチをして、再び甲板の友人の元に戻ると船はもう到着寸前の様子だった。

友達におまえどこに行ってたんだよ。50分くらい戻ってこなかったぞ。と言われて
やってしまったと反省。

夜景も途中から全然見てないし、もったいないことをした。

幹事の友達は横のカップルと何か仲よく話していて、
さすがの社交性を発揮して、カップルの女性と番号交換をしたらしかった。

4人で船から降りて階段を降りていく道すがら、お前ら全然なにもしないし声をかけないからさあ。と幹事はおかんむりな様子だ。

いくつか女性だけのグループが出近付近にいて、
ナンパが得意な幹事の友達は鼻が効くのか、例えばあの2人組のグループはナンパ待ちで、
今日は収穫がなくて帰っていくグループ。
あれもそう。 本当にもったいないよ。

声をかけない男も本当にもったいない。
チャンスは沢山あるのにバットを振らないとかどういうこと?と嘆いていた。

それから電車で移動をして、幹事の友達が行きつけらしい居酒屋で反省会が行われた。

ここは幹事が好きなバイトの子がいるらしく、その子が来ると褒めてヨイショしまくっている。
黒髪のショートカットで小柄なスレていないようなマトモそうな感じの子で、
奴はこういう正統派のタイプが好みなんだなとそれを見て思った。

女好きで女性経験が豊富な奴ほどケバかったり派手な自己顕示欲が強そうな
遊び人タイプの女は選ばない。大人しそうで控えめな普通っぽい子を好むのだ。
多分、それが経験則からくる女性選びでの一番の正解なのだろう。
見た目の派手さに左右されないのだ。

幹事は、彼女がいないBに一肌脱いで今日はナンパをしてあげて、
なんとかいいところまでまとめてあげようとするつもりだったらしいのだが、
Bがあまりにもテンションが低く、乗り気ではなさそうなので、やめたのだそうだ。

Bの俺はナンパとかできないし無理なんだよという弱気な釈明に対して、
その中で彼が発した言葉で印象的だったのは、

お前な、あのイチローは4千本安打を打った裏では、その倍以上は凡退しているんだぞ。
それだけ膨大な失敗して、4千本打てているんだよ。

もしかして、失敗したら恥ずかしいとか思ってんだろ?
こんなところでいくら恥をかこうが、誰もなんとも思わないし
傷つくわけでも何かを失うわけでもないんだよ。

当たれば儲けもので失敗したなかから成功するんだから、
どんどん自分からいかないと駄目なんだよ。

お前は出会い系をやっていると聞いていたから、もっとできる奴かと
思ってたからがっかりだぜ。

俺もナンパはできないタイプだし、世の有象無象の物事に対しても
彼のような強気なマインドは根本的に持ち合わせてはいないんだけど、
Bを奮い立たせるために熱弁を奮うそれを聞きながら、
言っていることに一理あるし、気持ちや姿勢の問題なんだなと思った。

幹事の友人がいつも仕事でも人に対しても何事に対しても
自信を持っていて強気な姿勢なのがわかるような気がした。
そういうやつだから、女も誘いに応じるのだろう。

本当はここにナンパをした女の子たちと来るために、今日はこの店を予約してくれていたに違いない。
奴なりの段取りや配慮を心暖かく感じたし、男だけでくる結果になったことを悪く思った。

リベンジで、次は幹事がBに遠慮をせずにナンパをするということで、また行くことが決まった。
次回はBと幹事のためにナンパは大の苦手な俺も微力ながらアシストに勤しもうと思う。
[PR]
by masa3406 | 2013-08-25 08:40


<< 喧嘩 花巻東の千葉選手の批判について思う >>