友人の一周忌

去年亡くなった友達の一周忌になり実家に呼ばれて、
彼の故郷まで彼の共通の友達と2人で電車で行った。
厳密にいえば一周忌は呼ばれた日の翌々日であり、
そこは親戚縁者の親族が集まるので、その準備に追われる前に彼の実家に呼ばれたのだ。

待ち合わせの時間の1時間前に早く着いてしまい、俺たちはしばらく駅前を散策することにした。
真新しい駅を出るとロータリーがあるが商店は少なく、すぐ海が見えていた。
まだ暖かく空は真っ青で心地よく、暖かい秋の日差しが射していた。

俺たちはとりあえず海岸へと歩いた。
海岸に至る道の両側には白塗りの壁が多く、ちょうど江ノ島や鵠沼の海岸沿いのような雰囲気で、
かつて湘南に住んだことがある俺は、どこか懐かしい気持ちになった。

海岸には砂浜があり、俺たちはしばらくそこで海を眺めながらとりとめのない話をした。
そこから、多分メインの出口であろう駅の反対側に出て、暇つぶしに見て回るようなお店はないかと散策をすることにした。

ロータリーはありタクシーが数台いて、どうやらこちらがメインの出口のようだった。
駅前には商店が何軒かあり俺たちはその中のお土産屋に入り、
帰りに買うお土産選びをした。
干物なんかもあったけど、日持ちを考えて
ちょうどうまそうな瓶詰めの塩辛と、伊勢海老の味噌汁がありそれを俺は買うことにした。

さらに商店や街を散策しようと店を出て駅前の道を歩いてみたものの、
どこか昭和の懐かしい雰囲気を漂わせている街はシャッターを閉めた店が多く
人通りも活気もなく寂れてしまっているようだった。

ここもご多分に漏れずほかの地方都市同様にバイパス沿いにでもショッピングモールでもあり、
そちらに買い物客や若者が流れて、古くからの個人商店が閉めて寂れてしまったのだろう。
駅前の本屋まで閉めてしまっている光景は、なんとも寂しかった。

見るものもないし時間を潰せそうもないので俺たちは再び海側の出口に出て、
待ち合わせの時間までベンチでしゃべりながら待った。

待ち合わせの時刻になり、軽自動車が俺たちの前で停まり、
中から亡くなった親友の奥さんと彼のお父さんだという小柄で白髪の紳士が出てきて、
こんな遠いところまで、どうもありがとうございますと言われ挨拶を交わした。

とても優しそうな顔をしたお父さんで、生前はやんちゃだった彼と小柄で穏やかな彼の父のイメージとが
結びつかなかった。
そこから彼の父親の運転で、市内にある彼の実家へ向かった。
二階建ての彼の実家の営む商店と一緒になっている家で、小さな玄関に俺たちは通された。

恐縮をしながら中に入ると、彼の微笑む遺影のある仏壇があり、
リビングではお寿司や焼き鳥などの豪勢な料理が並んでいた。
中では。彼ととても仲が良かった妹さんとお母さんが迎えてくれた。
下町育ちの俺には、ど下町のおばちゃん。といった雰囲気の俺には
どこか懐かしい暖かいお母さんだった。

俺も下町で育った、
彼との空気感の親和性はこの下町の雰囲気の育ちにあったのかもしれない。

海のある漁師町で獲れた新鮮な魚の寿司や料理を食べ、
ビールや酒を飲みながら、俺と友人は彼の両親と妹さんと奥さんと
生前の彼の話を語り合った。

彼は高校時代もやんちゃで、正義感からの喧嘩で怪我をさせて母親が学校に呼び出されたことや
その後始末の顛末や
やんちゃをしてさんざんハラハラさせられて苦労したエピソードをご両親が相槌を打ちながら
あれは確かああだったよね。と思い出を話してくれた。
それを話すご両親の言葉からは深い彼への愛情が読んで取れた。
手がかかる分、可愛かったのだろう。

こんな良いご両親を残して死んでしまうなんてあいつは、とんだ親不孝ものだ。

俺は、彼の両親と会うのはこれが初めてのことだった。
妹さんとはお見舞いに行った時に二三、話したことはあるのだが、ちゃんと話したことはない。
ご両親は、友達から見た普段の息子の姿はおそらく知らないだろう。

だから、ここで俺が来たことでできるだけ生前の彼のエピソードや
いかに男気があって友達思いで心優しい男だったか、実は繊細で女性に大変モテたことや
どうして俺が彼を人間的に好きだったかなど、伝えたかったし知ってもらいたかった。
だからエピソードや思いの丈を話した。

もちろん、彼の奥さんがいるのでモテた彼の女性関係のことは一切口にはできなかったのだが。。。

彼のお母さんが話してくれるエピソードを聞きながら、彼の笑った遺影を眺めていたら、
不覚にも涙が出てきて止まらなくなった。
俺はいつもは涙もろくはないのだけど、彼のことになると徳光さんばりにすぐに涙が出てきてしまう。
もうあいつと会えないことが寂しくてたまらなくなった。

本当だったら、ここに彼と泊まりに来る予定だった。

今度、俺の故郷に一緒に遊びに行って実家に泊まりに来いよ。
そう言われて、いつか行こうと俺たちは約束していたのだ。

そのいつかは来なかった。

そして、まさかこんな形で彼抜きで来ることになるとは思ってもみなかった。
できれば、ご両親と妹さんとあいつとこうやって、みんなで笑いながら飲みたかった。
あいつに彼の生まれ育った故郷を案内してもらいたかった。

その日に亡くなることは誰も予測してなかったらしく、突然容態が悪くなり病院から連絡があり
急に逝ってしまったとのことだった。
前日の夜に俺も電話で話していたし、その内容でも彼も翌日に死ぬことは予測していなかったのだから、
無理もないことだった。

彼は、最後は信頼している仲良しの医者がいるその病院でと決めていたらしく、
それでそこを最後の入院先に選んだのだそうだ。

彼は、酒の飲み過ぎが原因で死んだわけだけど
ご両親があるエピソードを話してくれた。

それによると、病院に彼のお見舞いにいくとなぜか彼がニンニク臭いことが度々あったんだそうだ。
それも、生のニンニクの強烈な臭いがしたのだそうで、
訝しんだ母親が、あんたどうしてそんなニンニク臭いの?と聞くと
あいつは、先生が身体に良いから勧めてくれてかじっているんだよ。
とうるさそうにいつも答えていたんだそうだ。

母親は、医者が勧めるとも思えないし、どうもおかしいと思っていたのだけど
今にして思えば、病院でもどうやらたびたび酒を隠えれて一杯ひっかけていたらしく、
その臭いをカモフラージュしていたのだろうということだった。

亡くなる前日の電話で俺に、酒を飲んでしまって体調が悪化したようなことを
カミングアウトしていたし、入院中も酒を完全にはやめられなかったのだろう。

そして、このエピソードが後に驚くべきことに遭遇するとは
この時の俺たちはまだ知る由もなかった。
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by masa3406 | 2013-11-14 20:54


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