情熱の人

移籍するジム仲間と彼のジム探しに付き合うためにキックのジム見学に行った。
ジムのある大きな駅を2人で降り立つと、まだ6月だというのに東京は真夏のように蒸し暑く
ベタベタする。

嫌な季節が始まったものだ。
俺は体質的に湿度が非常に苦手で夏が大嫌いなので、不快なことこの上ない。

アーケード街を歩いていくとジムは駅からほど近い比較的きれいなビルの地下にあった。

入口で前日に見学の電話をしていたものですがと告げると、
中に通されて受付の女性に見学用の椅子に座るように言われる。

間取りは大きいジムとは言えないものの、リングもあり設備はととのっているように思える。
今日は日曜日ということもあり、会員さんが4人ほどがいるだけで、
プロ選手らしき姿もなかった。

受付の女性がジムのシステムやここのジムで活躍する選手について説明してくれた。
日曜日はプロ選手は休みで、会員さんも少ないのよね。と言われる。

今日は来た日としては失敗だったのかなとの思いがよぎりながら練習を見ていると
小柄な初老の男性が近づいてきて話しかけてきた。

彼はここの有名なタイ人の会長さんで、その卓越した指導力には定評があり、
数々の名選手を育ててきた人物だ。

会長は俺たちにムエタイについて。彼の指導方針。このジムの方針など
気さくに時に熱心に説明してくれた。

彼のしてくれた話で、とりわけ興味深かった話は、ムエタイをバケツに例えてムエタイの技術は非常に奥が深く多岐に渡り
バケツ1杯分の技術があり、
それを6割ほどに減らしたのがキックボクシング
さらに半分以下にしたのが、K-1ルールのキックボクシングだという。

ムエタイをマスターすれば、ほかのルールにも対応することができるし、ボクシングにも対応できるのだと。
ただ、その逆は不可能なんだそうだ。

ムエタイ上がりのボクシング世界チャンピオンが多く
K-1で活躍したブアカーオの成功を見てもうなずける話だ。

次に彼は、まずはなにをやるにしても目標を定めないとならないと言った。

世界チャンピオンになりたいなら世界チャンピオン
チャンピオンになりたいならチャンピオン
ランカーになりたいならランカー
適当に試合をしたいならそれもよし
プロになりたいならプロライセンス取得と

どんなレベルであれ、まずビジョンがないとなにも達成できないと言う。

そして目的地を設定したら、次にそのために必要な道筋を調べて日々努力をすることが必要なのだと。

世の中には、目的地・着地点を定める人は多いけど多くの人は漠然と練習をするだけで、
そのために必要な道筋を調べて身につけるプロセスを怠ると彼は言った。

ただ、目標(夢)だけがあっても当てずっぽうに漠然と行動するだけでは遠回りになるだけはなく、
たどり着くことはできない。

そのためには、目標にたどり着くまでの道筋を綿密に調べて、次に身につけるための努力をしないとならないのだと。

会長の話す言葉のひとつひとつは、今の俺にはとても心に染み入ってきて、
あたかも自分の人生について指摘されているような恥ずかしい気持ちになった。

確かに、身近ないわゆる人生に流されている人たちを見ると
共通して明確な目標や将来のビジョンを持たないことに気づく。

彼らに将来の話を聞いても、明確なビジョンもなく手応えがない話になることが多いのだ。

各々あるにはあるのだろうけど、会長さんの言うように漠然とした夢を描くだけで、
具体性もなければそれを達成するためにやるべき道筋を描いていないのだと思う。
真剣に考えていないのだ。

俺もだけどあくまでも、今の生活だけ考えていてその場しのぎで行き当たりばったりなのだ。

前に付き合っていた女性なんかは、その典型的な人間で目先の誘惑に流されその日ぐらし。
やりたい仕事や夢を聞いても特になにもない。
といつもつかみどころのない答えが返ってくるだけだった。

彼は、ムエタイを日本に普及させるために日本に渡ってきたのだそうで、もう年齢的にシンドいのだが
身体が動く限りは指導を続けていくつもりなんだそうだ。

そして、教えた人間にはどんどん彼から持っているものを盗んで将来、独立してジムを開いてくれと
言っているのだそうだ。
そうして、その弟子がムエタイを普及させてくれれば目標は果たせるのだと。

とても話好きな人らしく話は尽きることがなく彼のムエタイや選手。会員さんを愛していることが
伝わってきて彼の情熱を感じた。

ちょっと見学に来たほかのジムの入るか入らないかもわからない俺たちに対して、分け隔てなく熱心に話してくれたのがうれしかった。

その後、体験練習に来た初心者らしき人に会長自らが熱心にユニークな表現でわかりやすく
基本を教えているのを見て、人を区別せずに分け隔てなく平等に接するお人柄を感じた。
指導力もだけど、情熱があって研究熱心な指導者がいるジムは選手が強くなるジムの条件だ。

将来のビジョン 情熱 

キックの指導方針とかどんなジムなのかをいわゆるキックの目で見学に行ったのに、
人生で大事なものを教えられたジム訪問だった。
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by masa3406 | 2014-06-01 20:34


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