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千葉の奥地の焼肉屋

代休だったので、成田市の近くの女の子の友人と車で飯を食いに行った。
普段は、ビルや家でゴミゴミとした都内の運転ばかりなので、
向かう途中の下道の、のどかな緑に色づいた田園風景は、
生活に追われた日々の狭間の休日にちょっとした安らぎを与えてくれる。

学生時代や卒業後3年くらいは、友人やひとりでもよくドライブや遠出をしていたものだが、
いつしか面倒になり、車を運転することは単なる目的地に向かう手段に成り代わり、
ほとんどそういう習慣がなくなっていた。
途中の、印西市の北総線沿いをまっすぐ走る国道沿いの両脇には、
前からあったニュータウンに加えて、
新たなショッピングセンター 映画館 観覧車までができていて、
郊外型の都市が形成されていた。

東西に一直線に続く北総線の線路の両脇には、草が生い茂る大きな用地が確保してあるのだが、
これは昔の成田新幹線計画があった遺構である。
ちなみに京葉線の地下のあの遠い東京駅も、もともとは成田新幹線計画の終着駅として
計画の頓挫でそのままになっていた地下駅を再利用したものだ。
この北総線には7月からスカイライナーが走り、京成の成田空港へのルートは、本線から
こちらに切り替わることが決まっている。

このあたりのガソリンスタンドは、昔から安くレギュラーがリッター128円と
都内ではまず見ることがない激安の看板が出ている。

北総線の線路から離れて北上したあたりから、
さらなる田舎の風景へと移り変わり、
いくつもの水田地帯や川や沼を超えながら、駅前に何もないローカル線の駅を過ぎ
友人宅近くのスーパーの駐車場に到着した。
急の休みで気まぐれで久しぶりに来たのだが、やっぱりあまりにも遠すぎる。
自宅から2時間もかかった。
とんでもないド田舎だ。
ここに来るのはこれが最後であろう。と車内で友人を待ちながらひとり思う。

距離としては自宅からかなり走ったのだが、信号がほとんどないおかげで、
ガソリンをほとんど食っていないことに驚く。
これを本当のエコと呼ぶのではないだろうか。
都内は過剰なまでに信号を作りすぎていて、かえって環境破壊の手助けをしている気がする。
イタリア パリ ソウルと比較をしても、東京は明らかに信号の数が多いのだ。

再会した友人と、近況話をしながら成田の芝山にある美味いと聞く
焼肉屋 大幸 へ向かった。
http://r.tabelog.com/chiba/A1204/A120401/12007372/
この間行った韓国では、満足するような焼肉を食べることができなかったので、
その欲求が果たせていないままだった俺の目的は、これであったのだ。

成田市を抜けて、交差点を曲がり国道をひたすら南下していく。
成田空港が近いので、夕暮れの空にジェット機が飛んでいる。
信号も少なく渋滞もないので、非常に運転がスムーズだ。
友人の道案内がなければ、今自分がどこいて
どこに向かっているのかさえもわからないような、田園風景だ。

19時を過ぎて空はやや暗くなり始めて、森や水田の中に
工業団地の入り口の看板が出てくる。
東京の人間が考えるなら、こんなところに焼肉屋が本当にあるの?
と思うような場所だ。

そこを左折して200メートルほど行くと、何もない緑地の中にぽつんと
店らしき建物と大衆肉料理の看板が見え
満杯の駐車場が見えてきた。
こんな何もない場所に、人でにぎわう店があるのは奇妙な光景でもある。
初めて訪れる友人もそれに驚いている。
駐車場には、品川や習志野の他の土地のナンバーの車も停まっている。
ここが美味いのは確かなようだ。

広い店内に入ると、見るからに霜降りで美味そうな肉の入ったすし屋のような
ショーケースがカウンターにあり、食欲をそそられた。
平日の19時だというのに座敷の店内は満卓で10分ほど待たされる。

それから奥の座敷に通されメニューを見るとなかなかリーズナブルだ。
ウーロン茶なんか250円だ。

メニューはホルモン系は少なく、どうやら和牛の正肉系の店のようだ。

裏メニューと書かれたページに
聞いたこともない部位のクラシタ(背中) ハバキ(脛の近く) フロスト(書いていない)と写真入りで書いてあり
そしてなぜか、並みのタンがある。
どうして、並のタンが裏メニューなのだろうか?

この友人はホルモン系が駄目なので、ここは俺も合わせて正肉を頼むことにする。

適当に和牛上ロース刺身 和牛上カルビ 和牛ハラミ 牛上タン塩 に
裏メニューのハバキ サニーレタスを友人のリクエストのままに一気に頼んだ。

だが、並でも良かったなと後で感じた。
この手の脂肪の乗った和牛の焼肉店の店は、
大概 上を頼むと霜降りの脂肪分が多いので、
食べていると、だんだんとしつこくなってくるものだ。
なのでこの手の焼肉屋では、俺は並を頼むことが多い。
マグロにたとえるなら、上トロよりも中トロのほうが
脂肪が多すぎずに美味いと感じるそれと同じだ。

一気に注文したので、運ばれてきた皿が卓にたちまち広がってしまった。
皿の肉は、東京ではありえないほど多く
肉も全体的に分厚く切られていることに友人ともども驚いた。
タンも東京のとは違い、分厚く切られている。

都心で、この肉質でこの量ならいくら取られるかわからない。
このコストパフォーマンスの良さは、東京でもないと思う。
ここがわざわざこの奥地まで来る価値がある、メリットになるのではないだろうか。

まずは並々と入ったウーロン茶で乾杯をする。
出てきた肉は、どれも新鮮で生でも食べられるような肉質だ。
特に山葵しょうゆで食べる、ロースの刺身はとろけるように柔らかく、脂が解けていく食感と
コクがたまらない。
やっぱり、和牛は美味いなと感動する。

新鮮なので、正肉はさっとあぶるくらい焼いて、半生で食べるのが美味しいのだが、
友人は生生しいのが苦手だとか言って、
色が変わるくらいにきっちり焼いて食べていて、俺は内心げんなりした。
なんてもったいない食い方だ・・・。

肉をたくさん食べ、そろそろ味を変えたかった俺達は
ご飯類を頼むことにする。
友人は、石焼ユッケビビンバを頼み
俺は焼肉店で頼む定番のクッパを頼もうとメニューを見ると
ないのだ。
この店には、なぜかクッパ類がまったくない。
俺が困惑していると、友人もクッパがない焼肉店ははじめて見たと
驚いている。

後はライスとなぜか焼きおにぎりしかない。
俺はビビンバが苦手なので、頼みたいものがなくなってしまった。
冷麺もないし、ケーキやハンバーグはあるのだが
肉以外のサイドメニューが乏しいのが、
この店の欠点であるようだ。

頼むものがなくなった俺は、ライスを仕方なく注文した。
友人は、女1人にビビンバは量が多いのか
苦手だという俺に執拗にビビンバを勧めてくる。
ビビンバが苦手な俺を信じられないと、理由をこと細かく聞いてくる。

そこから、苦手な食べ物の話題になった。
この子は、普通 相手が何かの食べ物を苦手だといえば、ああそうなんだとそれで済むことを
どうも自分が好きなものが、他人が嫌いなことが信じられないらしく
大きく驚きながら、どうして苦手なのかをマニアックなまでに食い下がって聞いてくる。

俺も普段、苦手な食べ物に対して一々どうして苦手なのか
理由を掘り下げて考えているわけではないので、
聞かれても全部を相手を納得させるような返事はできない。
俺は、それを曖昧に食わず嫌いと誤魔化したが
納得できないような変な顔をしている。

人間は、普段考えていないことを言葉にして説明するのは困難なものだ。
だから、そうしたやり取りには少々疲れを要した。
この子と付き合う奴は、大変そうだ。
嫌いだから嫌いなのだ。
そこは、普通に流してくれ。

それから車で友人を送って帰るのだが、
友人宅で降ろした帰りに、
すっかり昼間とは変わった田舎の真っ暗な景色に
田舎の複雑に入り組んだ道。
同じような真っ暗な景色に、住所も出ていない田舎道。
今どこを走っているかも時にわからなくもなり、
間違った方向に真っ暗な利根川沿いの道を走り続け、
俺は何度も曲がる道を間違え、時に同じところをぐるぐると回りながら
えらい時間をかけて帰宅した。
途中には、漆黒の闇の中
遠目のライトだけが頼りの細い道で両脇は崖のような場所もあり、
この道を行けば、どうなるものかと心細くさえなった。

都内と近県の都市の地理には詳しいつもりの俺が、
真っ暗な田んぼや森の中では、全くの無力な単なる方向音痴になってしまったのだ。
車を買い換えて、こんな時の最大の味方。
カーナビをつけていなかったことを後悔した。

田園風景を脱出して、見慣れた国道や駅や町に出たときには
心底ホッとした。
そのような、闇夜の田園を生活圏として生活をしている友人が、
俺には全くの別の人種に感じたのだ。

やっぱり、東京の明るい大都市生活のほうが
俺には合っているようだ。
この休日に再発見をする出来事であった。
by masa3406 | 2010-05-26 05:27


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