人気ブログランキング | 話題のタグを見る

歯医者

歯の調子が良くないので、仲良くしている同級生に相談をすると
小学校から高校までの共通の同級生が開業していて、そこに通っていると聞いて
最初に彼に仲介してもらって卒業以来連絡をしてみた。

電話に出た彼に一言どこが悪いの?と聞かれたので説明をすると
じゃあとその同級生の友達が治療を受ける同じ日の同じ時間に来るように言われたので、
駅で待ち合わせて一緒に行ってみた。

小学生の時に何度か彼の家に遊びに行ったことがあって、
その後も高校で部活が一緒だった。
高級住宅街にあるすごく大きなお金持ちの家で、床がワックスでピカピカにいつも
輝いていてツルツルで、そこでムーンウォークをするのが楽しみだった。
飼っている犬が、俺たちが遊びに行くと興奮して、
よくソファーの上に嬉ションをしてたのを憶えている。

けれども、中高では一緒に遊んだことはなかったし、
卒業後は結婚式や同窓会で会った程度なので、
いきなり連絡して仕事を増やして図々しいんじゃないかなとか、冷静に考えてみてちょっと気が引けた。

友達について行くと彼の開業する歯医者はオフィス街の駅前のビルにあった。
こんな街中の便利なところでやっているのか。
大したものだ。

待合室の受付の女性に診療の手続きを済ませると、先に友人が呼ばれて
しばらくして俺が呼ばれた。

待っていた同級生は、歯医者の先生といった貫禄と風格があった。
診療の椅子に座り最初に症状を説明すると
口の中を診て、じゃあまずレントゲンを撮ろう。
と言った。

レントゲンを撮ってから、再び診療の椅子に座ると
今日は歯石を取ろう言った。

俺は、もともと歯が丈夫で虫歯が1本もなかったのだが、
それを過信して高校を卒業以来1度も歯医者に行っていなかったので
歯石が溜まりに溜まって、とんでもないことになっているらしかった。
同級生は、それを器用な手つきでドリルで1つ1つ削ってくれた。

記憶では、彼は小学生の時から手先が起用で、プラモや図工の工作で
作った作品が秀逸だった。
プラモで難しい塗装もムラなくプロのモデラーのように完璧に仕上げていて、
こいつ器用だなあと小学生だった俺は舌を巻いたのを
今でも憶えている。

今は舌を巻いて歯石をドリルで削られている。

この展開が高校時代に予想できただろうか?
不思議なものだ。

彼は父親が歯科医で開業をしていたので、この道に進んだのだけれども
それとは関係なしに手先が器用だし天職だったのだろう。
こうして実家で手伝うのではなく、自分で開業までして成功しているのだろう。

他にも歯医者をやっている同級生はいるのだが、だいたいが親を手伝ったり
あとを継ぐかをして自分で開業している人は稀だった。

同級生が、虫歯ができているよ。と言って
そこを鏡で見せてくれた。
見ると少し黒ずんでいるところが数箇所あって、それが虫歯なんだそうだ。
虫歯は俺には無縁なことだと思っていたので、これにはショックを受けた。

これでしばらく治療に通わないとならなくなった。
削ってくれた歯石のあとは、いくつもの隙間ができていた。

診療が終わってから、彼は診療所を閉めてそのまま3人で飲みに行くことになった。

卒業以来彼と飲んだのは結婚式の帰りの1度だけだったし、
中高でも特に親しかったり一緒に遊んだことはなかったはずなのに、
小学校から一緒だった幼馴染だからだろうか。
部活が同じだったからだろうか。

彼のいきつけの小料理屋で3人で席に座っても違和感なく、
話すことはいくらでも湧いてきて昔話や
俺が前にしていた仕事の業界の裏話なんかしながら盛り上がった。

部活で彼はキャプテンだったのだが、初めて聞いたことだけど俺たちのポジションは個性派が多く、
まとめるのが大変だったそうだ。
俺もマイペースがゆえに彼にきっと迷惑をかけていたんだろう。

酒もつまみも進み、3人には小学生時代のような楽しい時間が流れていた。

こうして屈託もなくお互いに会話ができる同級生とはいいものだ。
最初に久しぶりすぎて気まずくないだろうか。と懸念していたことは杞憂だったようだ。

そうして話し込んでいると、彼がところでお前たちは結婚本当にどうするんだ?
とさっきまでとは違って、真剣な表情で詰問をするように聞いてきた。

彼は既婚で子供が2人いるのだが、俺のことも友人から間接的に聞いていたのだろう。

俺の友達に心配するような顔でこれまでに何回も言われたことがあったけど、
今の同級生も同じような表情をしていた。

今の彼は肉食系で、女の人のネットワークが広くてたくさんの紹介候補がいるらしく、
いつ探すの? 今でしょ!ってことで
2人とも合コンに参加をすることがなぜか即決してしまった。

今までならごまかして断っていた俺だけど、ここは縁とせっかく世話を焼いてくれる
同級生の気持ちを大事にすることにした。

なにからなにまで、すっかり立派になった同級生に世話になりっぱなしの日だった。
by masa3406 | 2013-04-04 07:24


<< 孤独感 距離 >>