人気ブログランキング | 話題のタグを見る

たったそれだけのことで

テレビ宮崎のアナウンサーが、尻相撲大会の生中継中に、
水田に飛び込み頚椎骨折したという
痛ましい事故が起こったことを知った。

俺は、以前働いていた会社のAさんのことを思い出した。
20代半ばだったAさんは違う部署にいたのだが、
身長は180くらいの色黒のカッコいい人で
大学時代にボクシングをしていた経験があり、
格闘技やボクシングが好きな俺は、いつしか会話をするようになった。

1回俺が誘って、2人でK-1を有明で観戦したこともあった。

外での彼は、会社で見せる低姿勢で柔和な彼とは違って、
プライベートではサーフィンをしているそうでビーサンで現れた彼は、
話すと友達も多く活動的で、負けん気が強そうな強い自我が伺えた。
たぶん、運動が出来てちょっとやんちゃなタイプなんだろうなと思った。
俺も体を動かすのが好きだからわかるのだが、体を動かすことが
この人はなによりも好きなタイプの人種だろうなと思った。
その日出場していた新日本キックの武田幸三が大好きらしく、
Aさんは熱心に応援していた。
惜しくも負けてしまったときは、本当にがっかりしていたのが印象的だった。
試合が終わると、実は俺、コンビニの駐車場に車を停めてるんですよ。
といたずらっぽく笑ってダッシュして帰っていった。

ある日、会社でそんな彼が事故にあったと聞いた。
仲間とサーフィンに行って、海辺ではしゃいでいて岩場から飛び込んだ彼は
思ったよりも浅瀬で、もろに後頭部をしたたかうちつけてしまったのだ。
飛び込んだ状態で動かないAさんの異変に気づいた仲間があわてて救急車を呼び、
Aさんは病院に搬送された。


病院で意識を取り戻した彼には、残酷な運命が待っていた。
脊髄損傷による全身マヒだった。

上司からそれを伝え聞いた俺は言葉を失った。
あの活発なAさんの体がもう動かないのだ。

精神状態も混乱しているかもしれないし、そんな姿を見てほしくないかもしれない。
俺も含めて社の大半の人間は、お見舞いを自粛した。
なによりもかける言葉が見つからない。

上司とごくごく近しいほんの一部の人だけが、病院にお見舞いに行った。

お見舞いした上司や一部の人の話によると、母親が付き添った彼は、
もう指先がかすかに動くだけだという。
まだ若いのに、これ以上に残酷なことはない。

人の運命ってなんなんだろう。神様っているのだろうか。
その時に俺は思った記憶がある。

結局、俺はしばらくして前の会社に転職して、その後Aさんがどうしているのかは知らない。

もし、彼がやんちゃで活発な性格でなかったら、
その日、はしゃいで思い切り飛び込んだりしなかっただろうと思う。
この宮崎のアナウンサー同様に
ちょっとした遊び心で失った代償は、とてつもなく大きなものだった。
たったそれだけ たったそれだけのことで、一瞬にして人生が変わってしまったのだ。

たったそれだけのことで・・・。

今でもあのビーサン姿の真っ黒に日焼けした彼の姿が、強烈な印象として思い出される。
by masa3406 | 2008-06-21 05:43


<< コミュニケーション 将来 >>