2009年 10月 11日 ( 1 )

夜逃げの手伝い?

夜のバイト先のよく話す(話を聞かされる?)
女の子から、前々からその子の名義の部屋を引っ越す予定があり
引越しの手伝いをなんとなく頼まれていたのだが、
いよいよ引越し先の部屋が決まり引越しが具体化したということで、いろいろと相談をされた。

その子は女の子の同居人と住んでいて、一刻も早い引越しを考えているのだが
同居人がお金がないから来年まで待ってくれと拒否をされて、
引越しができない状態で困っている。
というところまでは聞かされていた。

俺は別に彼氏でもなんでもないので、俺から誰でも女の子の生活に
立ち入ることはない。
基本的に聞き役で、求められればアドバイスをする程度のスタンス。
まあ、いずれは引越しをするのだろう。
手伝ってくれ。と頼まれればそのときは、まあ仕方ないが、
言ってこなきゃそれでラッキー。
くらいに思っていた。

彼女は同居人とも不仲で、なかなか解約日の具体的な話が進まないと言っていたのも俺も覚えていた。
同時に、不仲さのストレスにも苛まされているらしく、それも引越しの大きな原因でもあるような
愚痴もよく聞かされていた。

それは解消して話しがついたのだな。と思いつつ

まあ、仕事の予定もあるので早めに言ってくれ。
やるとしたら、だいたいの時間帯とかおおよその日程はいつ?
と俺が聞くと
たとえば夜は引越しは可能だろうか?みたいなことを何か申し訳なさそうに聞かれた。

え? 夜に引越し?

なんだよ それじゃあ、まるで夜逃げじゃん。
と理由を聞く俺。

すると、実は同居人とはまだ話がついていなくて、同居人がいない時を見計らって
実力行使で出て行く予定だと言う。
家主にはもう来月で解約を話しているのだという。

なんだか穏やかではない話である。
うーん それは後に遺恨を残してまずいんじゃないの?
いきなり出て行かれて、翌月から家賃が2人分が降りかかったら
同居人も困るし、パニックで怒り狂うかもしれないよ。
と、話し合いの交渉の場を持ち、同居人を強固な姿勢で説得することを勧める俺。

生きていくうえでは、むやみに人に恨みを買わないことが一番である。
せめて、来月分の家賃光熱費は彼女が持つとか
妥協点を見せたほうがいいのでは?とアドバイスをした。
人はまあ誠意としてこれをしてくれたから、と思えば心底からは恨めないものである。
何もしないで出て行くことで、いらぬ100%の恨みを買う恐れがある。

しかし、また夜逃げの手伝いの依頼か。
俺は、苦笑いをした。

それは、俺は以前にも夜逃げの手伝いを頼まれたことがあるからだった。

最初の会社を辞めた俺が、ちょうどつなぎでしていたバイト先に
男の先輩で28歳くらいの人がいた。
その人は九州から出てきている人だったが、九州男児のイメージとは程遠い、
ナヨナヨした感じの、男くささが微塵もないどこか頼りない人だった。
いい人でとても性格が温厚な人だったので、バイトの移動中とか一緒に仕事をしたときは
何を話していたのかは、覚えてはいないけどよく話していたように思う。
人に何かを頼まれると断れない、お人よしのタイプの人だったように思う。

ある日、その先輩とバイトの現場先から仕事を終えて2人で帰っていると、
何か先輩が落ち着きがない。

電車の駅に向かう途中に、
実は頼みごとがあるんだけど、これから家まで来てちょっと手伝ってくれない?
と懇願するように切り出された。
先輩の住むアパートは、神奈川県の相模原だ。
今から相模原に?
時計は夕方の4時を指していた。

先輩の顔は、何かに怯えている様子で、
彼の身が緊急を要していることを物語っていた。
何か非常にやんごとなき理由があるようだ。
俺は帰りの電車内で先輩の話をじっくり聞いてみることにした。

その先輩は、先輩名義のアパートで30過ぎの年上の彼女と同棲していた。
最初は告白をされて付き合い、包容力もあるごくごくやさしい彼女だったのだが、
暮らしはじめてみるとそれはすぐに豹変した。

実は気性が尋常ではなく荒く、嫉妬深く寂しがりで束縛も厳しい。
性格がきついので気が弱い先輩は、彼女の言動に神経を遣い怯えるようになった。
やがてそれは先輩への暴力へと発展し、
耐え切れなくなった先輩は、別れを決意したのだそうだ。
しかし別れ話を切り出すと、彼女は泣きわめいたり暴れる始末。
部屋は先輩名義なのに、出て行ってくれず話にならない。

あるとき、別れるなら一緒に死のうと包丁を突きつけられた先輩は、
これは彼女が仕事に出ているときを見計らい、同棲先から
荷物共々逃げるしかない。と心に決めたのだそうだ。

そして、その決行日が今日だったのだ。
たぶん、いざ行うにもすっかり恐怖心に囚われて不安で心細くて仕方ない先輩は、
今日俺と話をしていて、話を聞いてくれて手伝ってくれる仲間が欲しくなったのだろう。

話をしている途中で、先輩は彼女らしき人の電話に出て
うん。じゃあ○○時にねえ。と先輩はまるで何事もないかのような仲良さげな口調で話していた。

先輩は彼女の仕事が終わってから、いつも彼女と都内で一緒に待ち合わせをして
それから一緒に神奈川の自宅まで帰宅しているのだそうだ。
彼女は寂しがりやでそうしないとならないのだという。

この人は毎日そんなことをしていたのか。
俺は心から同情した。

今日は実はそれはフェイクで、先輩は待ち合わせ場所へは向かわずにその隙に神奈川の自宅まで行き、
アパートから家財道具を自分の車に積んで逃げ出してしまおう。

そんな計画だと明かされた。
いつも彼女の命令やわがままに何でも従っていた先輩。
彼女との約束を破るだけでも、実際かなりの勇気がいったことであろう。

だけど、俺はその後の先輩の生活のほうが疑問だった。
その後、家無しの状態でどこに泊まるつもりなのかと疑問を投げかけてみると
とりあえずは車で生活をして、すぐに家を借りるつもりだと答えた。
なんとも行き当たりばったりで、あまりにも無計画だ。
俺は、当時は実家なので泊めてあげることはできない。
こっそりと家を借りてから、逃げて引越しをしてもいいのでは?と
提案をしてみるも、今はただただ一日も早く逃げ出したいのだという。

普段、いろいろ話を聞いてくれる穏やかでいい先輩だ。
話を聞いているうちに、この怯えきった草食動物のような先輩を
助けないと。と身体からアドレナリンが湧き出てくるのを感じた。

ここから先輩の家に戻るのは、地下鉄と小田急線の急行と各駅を乗り継いで2時間。
彼女との待ち合わせ時刻は、あと3時間。
急ぐ必要がありそうだ。
混み始めた小田急線に乗りながら、2人で今後の彼女の電話への対応。
計画を2人で話し合った。

空が暗くなった駅に到着すると、先輩は帰り途中の不動産屋に鍵を返した。
幸い駅から先輩のアパートは近く、そこから2人で持ち出した荷物を
小走りで往復して先輩のセダンの車のトランクに押し込んだ。
荷物が少ないとは言っていたけど、この人のはたったこれだけだったのか。
少ない家財道具からも、田舎から身一つで出てきた先輩の寂しさをどことなく感じた。

これは本当に夜逃げ状態だ。

先輩は気疲れしてそうだったし、彼女からの電話に備えて
運転は冷静な俺がしていくことになった。
なんだか非常にスリリングな、逃亡者みたいな感覚だ。
車を都内に向けて走らせると、先輩は手伝ってくれた俺にご馳走をさせてくれと
先輩の希望で、世田谷区の桃太郎寿司に寄ることになった。
逃げ切ってやったぜー!
そこで、2人で寿司を食べながらとりあえずの安堵を尽き
先輩の脱出成功を祝った。

正直、基本的に男と女の問題だから2人のことは2人にしかわからない。
ただ、先輩のホッとした解放されたような表情が俺にはうれしかった。

それが俺が経験した、夜逃げの手伝いだった。

果たして、また俺は夜逃げの手伝いをすることになるのだろうか。
両方とも、家主が同居人から逃げるための夜逃げである。
というのが奇遇にも共通する。

とりあえずは、ならない方向でアドバイスをしたのだが、どうなることか。
ならないこと祈りたいものだ。
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by masa3406 | 2009-10-11 07:28